相続不動産を売却するときの問題と対策

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相続不動産を売却するときの問題と対策

住宅や土地などの不動産を相続することがよくあります。その住宅に同居している家族が相続するのであれば、その住宅に住み続けるという選択となるでしょうが、それ以外の場合、相続した不動産(相続不動産)を売却して現金化したいと考えることも多いはずです。

実は、こうした相続不動産を売却するときには、思いがけない費用や手間がかかってしまうことが少なくありません。本記事では、相続不動産を売却するときに起こる問題と、その問題に対する対策について紹介してみたいと思います。

相続不動産の売却にからむ問題

一般の不動産と同様、相続不動産を売るにはその不動産の価値を知るために、不動産会社に査定をしてもらいます。そして、不動産会社の査定によって、相続不動産の売却価格などが提示され、その査定額に喜んだりする訳ですが、実際にはすんなりと売却してその査定額を満額手に入れることが難しいケースも少なくありません。以下、相続不動産の売却にからむ問題について説明します。

相続不動産に潜む隠れた問題

相続不動産には様々な問題が潜んでいることがあります。例えば住宅であれば、建物の雨漏り、シロアリの害、主要構造物の木部の腐食などがあります。また土地であれば、土壌汚染や埋設物があることもあります。このような問題は、不動産の査定額、つまり売却価格を下げる要因となるものです。

ところが、相続不動産である住宅に住んだことがなく、相続不動産である土地のことについてよく知らなかった相続人は、相続を受けた不動産に潜んでいる上で述べた様々な問題に気付かないまま不動産会社の査定を受けることで、本来受けるべき査定額よりも高額な査定額が提示されてしまうことになります。

相続不動産がもつ様々な問題を買主に説明できないまま相続不動産を売却してしまうと、売却後に問題が発覚してトラブルとなります。不動産売買の慣行においては、不動産の引き渡し後、対象不動産の問題が発覚した場合、一定期間内は売主が費用負担を含む責任を負うとされているので、相続不動産を売却した後、突然、売主が高額な費用負担をしなければならないという事態になります。

相続不動産である建物の修繕や解体

例えば、相続不動産が土地と建物であった場合、売買交渉において「更地にして引き渡して欲しい」と買主から要求されることがあります。この要求に応じるには、売主は引き渡しまでに建物の解体、撤去を行うことになります。あるいは、相続不動産が老朽化した建物であった場合、少しでも高く売却したいと考えてこの建物の修繕を実施することもあります。

もちろん、建物の解体・撤去や修繕などを事前に行うことで、その費用を上回る売却益を手にすることができるのであればいいのですが、実際には費用をかけてもそれほど売却益は変わらず(逆に損することもある)、手間だけがかかったということが多いようです。

相続不動産である土地の測量

相続不動産である土地を売却する際には、その土地の面積や形状を明らかにするために測量(「確定測量」という)を行うのが一般的です。測量を行わないと、売却後に近隣の人たちとトラブルになったり、正しい査定を行えず売却価格に影響したりする可能性もあるからです。

住宅用の土地である場合の確定測量にかかる費用は50万円程度ですが、測量にかかる時間は2,3か月かかることもあります。また、隣接地の所有者に測量をするための事前説明をしたり立ち合いを求めたりといった手間もかかります。

相続不動産売却時に起こる問題への対策

次に、上で説明した相続不動産の売却にからむ問題について、なるべく費用や手間をかけないための対策をご紹介します。

契約不適合責任を免責または限定する

契約不適合責任とは、引き渡し後の一定期間内に売主が気づかなかった相続不動産の問題を買主が発見した場合、その問題を解消するために売主が費用を負担しなければならないという契約上の義務のことをいいます。

例えば、上で述べたような建物の雨漏り、シロアリの害、主要構造物の木部の腐食などが発覚した場合には、これを修理するための費用を売主が負担することになります。土壌汚染が見つかれば、売主は土壌改良工事を実施しなければなりませんし、地中内から大量の残置物が見つかれば、売主はその撤去工事を実施しなければなりません。これらの工事には数千万円という費用がかかることもあり、ときには売却額が全て吹っ飛んでしまうこともあります。

不動産の売却において一番大切なことは、いかに高く売却するか、につきるでしょう。同様に、相続不動産においても高く売れるのではあれば高く売却するにかぎります。しかし、相続不動産において対象となる不動産を熟知していない方が相続し、売却をするのであれば引渡し後のリスクも鑑みて金額については妥協することも必要となるのです。

このような売却後に生じ得るリスクを軽減するために検討してみたい対策の1つとして、売買契約において契約不適合責任を免責または限定することがあります。

契約不適合責任を免責するというのは、売却後に売主が気づかなかった相続不動産が持つ問題が発覚しても、売主はその問題を解消するための責任を一切負わないということです。契約不適合責任を限定するというのは、売却後に売主が気づかなかった相続不動産が持つ問題が発覚した場合、売主はその問題を解消するための費用を一定限度(売却額の30%とか)でのみ負担するということです。

このような契約不適合責任を免責または限定することは、買主にとっては不利な条件になるので、当然、相続不動産の売却価格を安くする要因となります。

相続不動産においても高く売れるのではあれば高く売却するにかぎります。しかし、相続不動産において対象となる不動産を熟知していない相続人が売却するのであれば、売却後のリスクも鑑みて金額についてはある程度妥協することも必要となるのです。

「現況有姿」で売却する

上でも述べたとおり、相続不動産である建物の解体・撤去や修繕などを事前に行うことで、売却額を高くすることは可能ですが、その工事にかかる費用を上回るほどに売却額を高くすることは難しく、結局、余計な時間や手間だけがかかってしまうことがよくあります。

このようなリスクを軽減するために検討してみたい対策の1つとして、「現況有姿」での売却です。「現況有姿」とは不動産の現在あるがままの状態のことを意味し、現況有姿での売却とは、建物の解体・撤去や修繕などの手を加えることなく、現状のままで売却し引き渡すことです。

このような現況有姿での売却もまた、買主にとっては不利な条件になるので、当然、相続不動産の売却価格を安くする要因となります。しかし、売却時にかかる余計な費用そして時間や手間といったリスクを鑑みて金額についてはある程度妥協することも必要です。

測量なしで売却する

相続不動産である土地の売却時に行う測量は必要なことではありますが、法的義務となっているものではありません。測量にかかる費用というよりも、測量にかかる手間と時間がリスクとなるので、ダメ元であっても、測量なしで売却するという提案をしてみてもいいと思います。

測量なしでの売却は、買主がなかなか承諾せず実現は難しいかもしれません。もちろん、相続不動産の売却価格を安くする要因ともなります。しかし、測量実施に時間がかかって、引き渡しまでに長い時間と手間がかかるといったリスクを鑑みて、金額についてはある程度妥協しつつチャレンジしみることをおすすめします。

まとめ:相続不動産を売却するときの問題と対策

以上のとおり、相続不動産を売却するときには、思いがけない費用や手間がかかってしまうことがあり、そうした相続不動産を売却するときに起こる問題と、その問題に対する対策について紹介しました。

問題に対する対策としては、契約不適合責任を免責または限定する、「現況有姿」で売却する、測量なしで売却する、というもので、いずれも売買価格を下げずに実現するのが難しい交渉とはなりますが、検討してみる価値はあると考えます。