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遺産分割協議書は、故人の財産を相続人間で、どのように分割し配分するかを協議し合意した結果を記録する書類です。例えば、故人名義の銀行預金を払い戻したり、故人名義の不動産に関する相続登記をしたりする場合に、この遺産分割協議書が必須となります。
しかし、多くの方は遺産分割協議書の作成方法、とくに遺産に不動産が含まれる場合の、つまり法務局での相続登記にも使える具体的な作成方法について悩んでいます。
この記事では、法務局でも使える遺産分割協議書の「ひな形」とその利用時の注意点について、具体例に解説します。
遺産分割協議書とは?
遺言等による定めがなければ、故人の財産は相続人間での共有持ち分が民法で定められています。例えば、妻と二人の子供が相続人である場合、故人である夫の財産は、妻が二分の一、子供はそれぞれ四分の一ずつの共有持ち分となります。ただ、常に民法どおりの比率で財産を分割し分配するのは当事者にとっても不都合ことがあるので、相続人全員で協議し合意すれば、故人の財産を分割し分配する方法を自由に定めることができるとされており、これを遺産分割協議と呼びます。
そして、遺産分割協議書とは、相続人全員による遺産分割協議で故人の財産をどのように分割し分配するかを合意した内容を記録した文書です。
遺産分割協議書の重要性
遺産分割協議書は、故人の財産の具体的な分割・相続先を正式に証明する唯一の証拠文書となります。法的効力をもつ重要な書類であり、全ての相続人が署名・捺印することで正式に成立します。この遺産分割協議書が無ければ、例えば法務局への手続きとなる不動産の相続登記などは一歩も前に進まないので、相続手続きの中では真っ先に対応すべき重要な書類です。
法務局の手続き以外にも、遺産分割協議書を作成することで、第三者に対しても遺産の分割・相続先を証明できるため、例えば金融機関に対する手続きがスムーズに進みますし、後々の相続人間のトラブルを未然に防ぐこともできるという効果があります。遺産分割協議書の重要性は非常に高いと言えます。
遺産分割協議書の基本構成
遺産分割協議書には、基本的に以下の内容が含まれます:
- 被相続人(故人)の情報(名前、生年月日、死亡日)
- 相続人の情報(名前、生年月日、被相続人との関係)
- 相続する遺産の詳細(不動産、現金、株式など)とその具体的な分割方法(誰がどの遺産をいくら相続するのかなど)
- 相続人全員の署名・捺印(実印を押印して印鑑証明書を添付)
法務局でも使える遺産分割協議書の「ひな形」
故人の財産の中に不動産があり、その不動産を遺産分割協議で定めた相続人の名義に相続登記をする場合には、登記申請書類等とともに遺産分割協議書も管轄の法務局へ提出しなければいけません。
不動産の相続登記で提出する遺産分割協議書は、特に不動産に関する記載方法について細かいルールがありますので、登記手続きに不慣れな人が一からこのような遺産分割協議書を正しく作成するのは難しいでしょう。司法書士などの登記の専門家に依頼するのがベストですが、どうしても自分でやってみたいという場合には、法務局で公開している記載例を参考にするのがおすすめです。
遺産分割協議書の「ひな形」の利用法
インターネット上を検索すると多くの遺産分割協議書の「ひな形」が存在します。その中から使いやすそうな「ひな形」をベースにし、自分にあった遺産分割協議書をアレンジしていく方法が基本になります。「ひな形」を利用する際のポイントは、できるだけ具体的な記載例のあるものを利用し、記載例の内容を自分の状況にあわせて上書き編集することです。
このように記載例を上書き編集するという方法をとる場合に注意すべき点として、利用する「ひな形」の記載例にある遺産の種類、すなわち不動産、銀行預金、自動車などが、自分の状況にあっていないことがあるということです。例えば、不動産、銀行預金、自動車に関する遺産分割協議書を作成しなければいけないのに、記載例には銀行預金と株式しか記載されていない場合、必要となる不動産と自動車に関する別の記載例を探さなければいけません。
特に、不動産に関する記載については、法務局での登記手続きに対応した細かいルールがありますので、信頼できる記載例を参考にする必要があります。おすすめなのが、法務局のサイトで提供されている遺産分割協議書の記載例です。法務局の「不動産登記の申請書様式について」のページの中ほどに、「2-1 相続」の「所有権移転登記申請書(相続・遺産分割)」という項目があり、ここの「記載例(一太郎 Word PDF)」のいずれかをクリックすると、「遺産分割協議書の例」という遺産分割協議書の具体的な記載例を含んだ書類をダウンロードできます。不動産に関しては、この「遺産分割協議書の例」を自分にあわせて上書き編集するといいでしょう。
その他、不動産以外では、例えば銀行預金に関する部分は、金融機関が公開している遺産分割協議書の記載例(たとえば三井住友銀行)を参考にしたり、自動車に関する部分は、国土交通省が公開している遺産分割協議書ひな形などを参考にするのが信頼性が高いと考えます。
遺産分割協議書の「ひな形」利用時の注意点
「ひな形」を利用し記載例を参考にして遺産分割協議書を作成する際には、いくつかの注意点があります。以下、おもな注意点を記載します。
相続人全員の合意の確認
第一に、遺産分割協議書は相続人全員の合意内容を書面にしたものである点を忘れてはなりません。「ひな形」や記載例に忠実に遺産分割協議書を作成しようとするあまり、遺産分割協議での合意内容とズレが生じてしまうと意味がありません。作成しようとする遺産分割協議書の内容が相続人全員の合意内容と完全に一致しているかどうかは、細心の注意を払って確認しなければなりません。
専門家のアドバイス
遺産分割内容が「ひな形」や記載例と全く同じと言うケースはむしろ稀であって、「ひな形」と記載例を使って遺産分割協議書を作成する場合、多少なりとも個別事情に応じた改変や応用が生じます。
そのような改変や応用の部分は遺産分割協議書の法的有効性に影響を与えないことも多いとはいえ、その正確な判断には法律の専門知識を要します。可能であれば、作成した遺産分割協議書については、相続人の署名・捺印をする前に、相続を専門とする弁護士、司法書士、行政書士など専門家に確認してもらうことをお勧めします。専門家に確認してもらい、必要に応じてアドバイスを受けることで、法的に不備のない遺産分割協議書を作成することができ、相続人間の無用なトラブルや相続手続きの遅延を回避できます。
記載内容の正確さ
遺産分割協議書に記載する内容は、全て正確であることが求められます。特に、不動産の所在や価値、銀行預金や株式の具体的な額など、曖昧な表現を避け、具体的かつ詳細に記載することが重要です。記載例を上書き編集する場合は、編集忘れなどが無いように慎重に確認する必要があります。
遺産分割協議書を提出する際に必要な書類
遺産分割協議書を法務局や金融機関などに提出する場合には、あわせて必要となる書類があります。必ず必要となるものとしては、法定相続人を特定するための戸籍謄本(たとえば、故人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本など、「法定相続情報一覧図」による代用も可)と、相続人全員の印鑑証明書です。遺産分割協議書の署名・捺印には各相続人の実印を押印するので、その実印に対応する相続人全員の印鑑証明書が必要となるのです。そのほか、法務局や金融機関など、それぞれの手続きに応じて必要な書類があります。
まとめ: 法務局でも使える遺産分割協議書の「ひな形」とその利用時の注意点
遺産分割協議書の作成は相続手続きを円滑に進めるための重要なステップです。とくに法務局での相続登記手続きにおいては適正に作成された遺産分割協議書が必須です。
この記事で紹介した「ひな形」を利用した遺産分割協議書の作成方法や注意点を参考に、確実な書類作成を心掛けましょう。
全ての相続人が合意し、法的要件を満たした遺産分割協議書を作成することで、後々のトラブルを避け、スムーズな相続手続きが可能となります。必要に応じて専門家の助けを借りることで、さらに安心感を持って手続きを進めることができるでしょう。