負債相続はどこまで負担するのか?相続人間での負担割合と放棄の方法

広告

負債相続はどこまで負担するのか?相続人間での負担割合と放棄の方法

相続に関する問題は、人生の中で直面することが避けられない重要なテーマです。特に相続財産に負債が含まれている場合、その負債はどこまで負担すべきなのか、誰がどれだけの割合で責任を負うのか、また相続放棄は有効なのかについて正確な知識が求められます。

本記事では、負債相続はどこまで負担するのか、相続人間での負担割合はどうすべきか、そして相続を放棄する方法について詳しく解説します。

負債相続を誰がどこまで負担するかの判断基準

法律上、不動産や銀行預金などのプラスの財産だけでなく、故人のかかえていた借金などの負債、つまりマイナスの財産も遺産相続として残された遺族、すなわち相続人に引き継がれるのが原則です。

このように法律上は、プラスの財産もマイナスの財産も同じ遺産相続とされていることから、負債相続を誰がどこまで負担するかの判断基準は、法律の定めによる法定相続人と法定相続分(相続の割合)によるのが基本となります。

例えば、父母と子供二人の家族において父が亡くなった場合、法律によると、法定相続人は配偶者である母と2人の子供の計3人となり、法定相続分が母2分の1、子供4分の1ずつとなります。つまり、負債相続も、母2分の1の割合、子供4分の1ずつの割合により不安するのが基本的な判断基準です。

なお、法律の定めによる相続人と相続分とは異なる内容を定めた遺言書がある場合には、その遺言書の内容に従うことになります。また、遺言書が無い場合であっても、法定相続人全員で遺産分割協議を行い、法定相続分とは異なる相続割合を定めた場合は、この遺産分割協議で定めた内容に従うことになります。

遺産相続における負債の調べ方

負債相続であってもプラスの財産と同様に法定相続人が法定相続分(相続の割合)に従って負担するのが法律で定める基本ということであれば、故人の残した財産のうちプラスの財産とマイナスの財産のどちらが多いのか、すなわち遺産全体はプラスなのかマイナスなのかが重大な問題となります。そこで次に、遺産相続における負債の調べ方について触れます。

遺産相続における負債の調べ方は複雑ですが、第一に相続財産の全貌を把握することが求められます。不動産登記簿や金融機関の記録、保険契約書などの資料を精査し、故人の財産状況を確認します。

また、故人のかかえていた借金は、相続開始後に発覚することが多いです。この場合、まずは手元に残された書類や郵便物を手掛かりにして、不動産や銀行口座、保険契約、ローン返済や税金の滞納などの情報を詳しく調べることが重要です。

次に、プラスの財産とともに負債に関する書類を整理し、詳細な相続財産一覧を作成します。これにより、遺産全体はプラスなのかマイナスなのか、マイナスである場合にはどの程度の金額なのかがわかります。

負債相続の負担割合と放棄の方法

遺産全体の中で負債相続が大きい場合の対応方法はいくつか考えられます。以下、やってはいけない方法も含めて解説します。

故人の借金放置は危険

故人のプラスの財産を相続しておきながら、負債相続である借金を放置することは、法律的・経済的リスクを伴うので、やってはいけない方法です。

法律上、プラスの財産を相続した時点で、マイナスの財産も相続されたことになり、故人の借金は相続人が共同で引き継いだ状態になります。その状態で、負債相続である借金を放置すると、債権者により相続人の個人財産を差し押さえられる可能性もあり、生活基盤を脅かすリスクが存在します。

さらに、借金放置が続くと、利息の増加により債務額が膨らみ、最終的に生活再建が困難になるケースも多いのです。加えて、相続税などの税務問題も無視できないため、速やかに弁護士や税理士に相談し、法律に基づいた対応を取ることが重要です。

遺産分割協議で負債相続の負担割合を決める

負債相続を含めて遺産全体を相続人により相続する際に、遺産分割協議により相続人間における負債相続の負担割合を合理的な内容で決めることは現実的な方法のひとつです。

例えば、故人の残したプラスの財産の大部分が住宅であった場合、その住宅を相続して住み続ける相続人が、負債相続も引き受けるというのが合理的かもしれません。あるいは、故人の行っていた事業に関係する借金があった場合、その事業を引き継ぐ相続人が借金もあわせて相続するというケースもあるでしょう。

相続放棄により負債相続を放棄する方法

遺産のなかに現在居住している住宅や、現在生計を立てている事業などが含まれておらず、遺産全体に占める負債相続がプラスの財産に比べて大きい場合には、相続放棄を選択することも有効です。相続放棄は各相続人が、故人の死後3カ月以内に家庭裁判所へ申請を出して行います。

相続放棄が認められると、申請した相続人ははじめから相続人でなかったこととなり、遺産相続に関する権利及び義務が消滅します。従って、負債相続を引き継ぐことなく放棄できます。

注意点として、相続放棄は、これを申請した相続人が相続人でなくなるだけであり、例えば、法定相続人が母と2人の子供の場合に、母だけが相続放棄を申請すると、母は負債相続を放棄できるが、2人の子供は負債相続の負担割合が大きくなってしまうという事態が生じます。また、母と2人の子供が全員で相続放棄を申請した場合、相続の順位が次の順位に移り、故人の親や兄弟姉妹が負債相続を負担してしまうという場合もあります。

従って、相続放棄を申請する場合は、相続人全員はもとより、影響のある親戚も含め、よく話し合って慎重に、かつスピーディーに進めることが重要です。

借金を相続放棄できない場合の対応策

何らかの事情で故人の借金の相続放棄ができない場合には、いくつかの対応策があります。まず、限定承認を行うことが考えられます。限定承認とは、相続財産内でのみ負債を返済し、相続人の個人財産には影響を及ぼさない手続きを指します。この手続きを行うことで、相続財産を分割した上で、各自の負担を減らすことが可能です。

ただし限定承認は、故人の死後3カ月以内に相続人全員の合意により家庭裁判所へ申請しなければならず、申請後の手続きも複雑で費用が高額になりやすい傾向があります。

そのほか、借金の一括返済が難しい場合には、金融機関と交渉し、分割払いの条件を設定する方法も検討すべきです。

時効の援用を活用した借金相続対策

故人の借金を相続した場合、一部の債務には時効が適用されることがあります。時効の援用とは、一定の期間が経過すると法的に借金の返済義務が免除されることを利用する手段です。一般的には、消費者金融機関やクレジットカード会社に対する債務の時効は5年ですが、それぞれの契約内容や状況により異なる場合があります。

時効の援用を主張する際には、まず弁護士や司法書士などの専門家と相談し、適用可能な時効期間や手続きの詳細を確認します。これにより、借金相続による経済的負担を軽減することが可能です。ただし、時効の援用には特定の法律的条件が伴うため、慎重に対応することが重要です。

まとめ:負債相続はどこまで負担するのか?相続人間での負担割合と放棄の方法

以上のとおり、負債相続はプラスの財産と同様に、法律で定められた法定相続人が、法律で定められた法定相続分(相続の割合)で負担するのが原則です。

しかし、個々の事情に応じて遺産分割協議により、相続人間での負担割合は、相続人全員が納得のいく形で合理的に決めることがおすすめです。

また、どうしても負債相続の負担が難しい場合には相続放棄も有効です。ただし、相続放棄を申請する場合、他の相続人や親戚にも影響を及ぼす場合があるので、関係者とよく話し合って進めるべきでしょう。

そして、注意点としては、故人の借金を放置することは、相続人の個人財産が差し押さえられるなどの思わぬ重大なリスクが生じるので危険です。これらに気を付けがらスムーズな相続を実現しましょう。