兄弟による農地の相続に関する注意事項

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兄弟による農地の相続に関する注意事項

相続財産の中に農地が含まれている場合、その手続きと問題点は他の財産と比べて一層複雑です。特に、相続人が複数、たとえば兄弟である場合、その相続手続きは一層慎重に行う必要があります。本記事では、農地相続における具体的な手続きとその注意事項について詳しく解説します。

兄弟による農地の相続

所有する農地で農業を営んでいた父が他界し、その法定相続人が、配偶者である母と二人の息子兄弟であった場合、法定相続分に基づくと、配偶者は農地の所有権の2分の1を相続し、兄弟はそれぞれ農地の所有権の4分の1ずつを相続することとなります。

しかし、実際の相続では、相続人全員の合意により法定相続分とは異なる割合で遺産を分割することも可能です(これを遺産分割協議といいます)。例えば、父の農業を息子兄弟が手伝っていたような場合、以降は兄弟による共同経営として農地を受け継ぐこととし、兄弟が農地の2分の1ずつを相続するといった遺産の分割方法も現実的です。

農地の相続手続きと注意事項

農地を相続する際の相続手続きと、相続手続きを進めるにあたっての注意事項を説明します。

相続登記の義務化

農地を相続する際も宅地等と同様に相続登記が必要です。2024年4月1日からは、この相続登記が義務化されたため、相続開始後3年以内に登記の申請を行う必要があります。

この法律改正により、相続登記の遅延はもはや許されなくなるため、誰が農地を相続するのかを、遺産分割協議などで早急に決定し、例えば兄弟で農地を相続することになったのなら、兄弟が共同で相続登記の申請手続きをすみやかに進めることが求められます。

農業委員会への届出

2009年12月15日から、農地を相続する際には、相続した農地が所在する市町村の農業委員会への届出が義務化されています。

具体的には、相続人が農地の所有権を得たことを知った日から、おおむね10ヶ月以内に手続きを行うことが求められます。この届出を怠ると、10万円以下の過料が科される可能性があるため注意が必要です。

例えば兄弟で農地を相続することになったのなら、兄弟が共同で農業委員会への届出をすみやかに進めることが求められます。

農地の処分と許可

例えば、相続人が遠隔地に住んでいる場合や、自ら農地を耕作・管理できない場合など、農地の処分を検討することが一般的です。

しかし、農地の売買や用途変更には農業委員会または都道府県知事の許可が必要です。農地として売却する場合でも、買主が条件を満たす農業者である必要があるため、売却手続きには一定のハードルがあります。農地を宅地などに用途変更する場合も複雑な手続きが伴います。

また、遠隔地の相続人にとって、自ら農地の買い手や借り手を見つけることは困難です。こうした場合、農業委員会に届け出る際、買い手や借り手のあっせんを希望する旨を記載することで、委員会の支援を受けることが可能です。

農地の相続放棄とその管理

相続人である兄弟がどちらも遠隔地に住んでいる場合や、兄弟どちらも農地を耕作・管理できない場合であって、農地の処分も難しいときは、農地を相続放棄することも選択肢として検討する価値はあります。

相続放棄の制限

遺産全体のうち農地のみを相続放棄することはできません。つまり、相続権の放棄は相続財産全体に対して行う必要があります。

農地だけを切り離して放棄することは法律的に認められていないため、この点をしっかり理解しておくことが重要です。

従って、農地の相続放棄、すなわち遺産の相続放棄は、農地のほかに主だった相続財産が無い場合や、遺産全体に占める割合が負債のほうが大きいような場合に現実的な選択肢となります。

相続放棄後の管理義務

改正民法940条(2023年4月1日施行)により、相続放棄をした場合でも、放棄した財産を現に占有している相続人は、他の相続人や相続財産清算人に引き渡すまで、その財産を適切に管理する義務があります。農地に関しても同様で、放棄後も一定期間管理を行う必要があります。

まとめ:兄弟による農地の相続に関する注意事項

農地の相続には、相続登記や農業委員会への届出、そして農地の売買や用途変更に関わる複雑な手続きが伴います。申請や届け出は、所定の期間内に行わなければ過料などのペナルティもあるので注意が必要です。

兄弟で農地を相続した場合、兄弟間でよく打ち合わせ、申請や届け出を互いに協力してスムーズに進めることが重要です。また、農業委員会の支援や専門家の助言を活用することでも、スムーズな相続手続きを実現することが可能です。

農地の相続に直面する可能性がある場合は、早めの準備と対策を行って、スムーズな手続きと適正な農地管理を行うよう心掛けましょう。