相続予定の不動産は現金化よりも活用してみてはいかが?

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相続予定の不動産は現金化よりも活用してみてはいかが?

相続税を支払うために現金が必要なので相続予定の不動産を売却したいと考えることもあるでしょう。

しかし、相続予定の不動産が相続税評価額を上回る金額で売却できたらどうでしょうか?

高く売れたので喜ぶべきかもしれませんが、相続税評価額を上回る現金となり、つまりは相続資産が増え、その結果として相続税が上がってしまうことがあります。これはこれで素直に喜べませんよね。

こういった場合、例えば相続予定の不動産を一旦売却したあと、資産価値が高い都心駅近の中古マンションを購入して活用するといった選択肢も検討すべきでしょう。賃料による現金収入が得られますし、マンションの場合、相続税評価額が購入価格の2分の1~4分の1となり節税対策にもなります。

このように、相続予定の不動産は現金化ではなく活用をしたほうが良い結果を生むことも少なくありません。本記事では、相続予定の不動産について活用の方法を提案してみたいと思います。

一般的な不動産の活用方法について

不動産活用01

まず一般的な不動産について、その活用方法を解説したいと思います。

「最有効使用」とは

不動産を活用するにあたっては、できるかぎり多くの価値を生み出す活用方法を選択すべきでしょう。活用対象の不動産の価値が最も高くなる使用方法、経済合理性が最も高くなる使用方法のことを不動産鑑定理論では「最有効使用」と呼んでいます。

つまり、不動産を活用するにあたっては、まず、この不動産をどのように使用すれば最有効使用にあたるのかを判定することから始めます。

最有効使用の判定ステップとして、まず不動産の使用方法が、自己利用目的(自用)なのか、他人に貸す目的(賃貸)なのか、で場合分けします。

目的が賃貸であれば、さらに、その不動産の利用者が、単身者向けか、ファミリー向けか、アパートか、マンションか、など活用プランを細分化していきます。

活用プランを細分化したあとは、各活用プランについて、賃貸を想定した場合の標準的な貸室面積と想定賃料や、建築費などを考慮して、最も経済価値の高まる活用プランを最有効使用であるとして判定するのです。

最有効使用の判定に関する具体例

対象不動産が更地の場合

まず、近隣の規模や形状の類似する戸建の売買事例をいくつか取集して、対象地の試算価格としての土地価格を査定します。更地の上に自用の戸建住宅を建てることを想定したプランとなります。ここで査定した金額は、試算価格A(比準価格)とします。

また、更地の上に賃貸アパートを建築することを想定し、その結果得られる土地価格を査定してみます。ここで査定した金額は、試算価格B(収益価格)とします。

そして、これら2つの試算価格A、Bを比較して、価格の高い方が最有効使用であると判定します。

例えば、駅から徒歩30分以上もあるような戸建住宅が立ち並ぶ住宅地域に対象不動産である更地があった場合、自用の戸建住宅を想定した試算価格Aの方が、賃貸アパートを想定した試算価格Bよりも高くなります。よって、このケースでは、自用の戸建住宅として使用することが最有効使用ということになります。

また、駅から徒歩5分以内の利便性のよい店舗やアパートの混在する地域であれば、賃貸需要が高く、賃貸アパートを想定した試算価格Bの方が試算価格Aよりも高くなります。よって、このケースでは、賃貸アパートとして活用することが最有効使用ということになります。

ちなみに、最終的な鑑定評価額は、試算価格Aと試算価格Bのうち最有効使用となるほうの試算価格に重く比重をかけて決めることとなります。

対象不動産が空き家の場合

対象不動産が空き家の場合、現状のまま戸建住宅として販売する場合を想定します。まず、このときの売買価格を査定します。査定された売買価格の内訳として土地と建物に分け、土地価格のほうを試算価格Cとします。

一方、対象不動産である空き家を取り壊して更地とした場合について、この土地価格を査定します。査定された土地価格から、空き家の取り壊し費用を差し引いた価格を試算価格Dとします。

この試算価格Cと試算価格Dを比較し、高い方が最有効使用として判定されることになります。例えば、対象不動産である空き家が利用可能な状態であれば、試算価格Cにあたる現状のまま戸建住宅とするプランが最有効使用となりやすいでしょう。

また、対象不動産である空き家が、そのままでは通常の生活ができないくらいに劣化している場合であれば、試算価格Dにあたる空き家を取り壊して更地とするプランが最有効使用となりやすいでしょう。

収益不動産のプランニングから事業開始まで

続いて、最有効使用の判定により、賃貸アパートや賃貸マンションなどの収益不動産としての活用が最も価値が高いと判定される場合、プランニングから事業開始までの手順について説明します。

想定建物のプランニング

対象不動産の最有効使用を判定する際、収益不動産、つまり賃貸用の建物を建設するにしても、まず想定建物のプランニングが必要となります。例えば、アパートかマンションか、ワンルームかファミリータイプか、戸建賃貸か、など細分化し比較することで想定建物のプランを決めます。

具体的には、ファミリータイプの賃料水準と標準的な間取りワンルームの場合の賃料水準とを比較・検討、標準的な広さを比較・検討、さらに木造軽量鉄骨造か鉄筋コンクリート造かによる建築費を比較・検討などを実施することになります。

こうしたプランニングにあたっては、建築士に依頼する場合もありますが、その建築士が工事を請け負える分野に偏ったプランニングとならないよう、不動産鑑定士の検証を受けて中立公正なプランを選べるようにすべきでしょう。

そして、プランニングにおいては、資金調達する際の土地と建築予定建物についての担保評価額や銀行の融資の可否や金額など、資金調達計画もあわせて検証しておく必要があります。

建築プラン

次に、建築プランとして、まず想定建物を建築するための業者選びを行います。

複数の建築業者の見積もりを取り、見積りの内容や実績から適切な業者を選択します。例えば、建築業者には、大手ハウスメーカー(積水ハウスなど)、地元工務店、パワービルダー(飯田産業など)の3タイプあり、これらは建築単価が大きく異なる点も注意すべきです。

想定建物のプランによって、建築費に高いコストをかけて高い賃料をとるのか、その逆なのかも検証が必要です。一般的には高い建築費をかけたからといって、必ずしも賃料が比例して上がる訳ではありません。

いずれにしても、建築プランにおいては、賃料による収益から建築費を差し引いた利益が最大化できるようにプランニングすることが重要です。

融資実行、建築、完成

その後、融資が実行され、建築が開始され、建物が竣工します。

通常、融資を受けるにあたっては、対象不動産である土地と、完成後の建物とを担保として提供します。

建築費の支払いは、着工、上棟(中間)、引き渡しの三段階で支払うことが多く、その支払いの内訳は建築業者との話し合いで決まります。支払いのタイミングと、銀行融資のタイミングを注意深く設定することが重要です。

銀行融資の可否が事業の成否を決めてしまうことも多いのです。工事請負契約書を取り交わして、工事金額が確定したら、すみやかに金融機関に打診することをおすすめします。

活用開始(募集・賃貸開始)

賃貸アパート建築などであれば、建物竣工のタイミングにあわせて新規賃借人の募集が開始されます。そして、賃借人が入居した後は、家賃収入でアパートの運営費を支払いつつ、ローンの返済などを行って、毎月の経営を行っていきます。

最終的にいくら現金が手元に残るかがとても重要です。

注意すべき点

建築業者の中には、家賃保証や建物管理契約など、建築後の管理まで申し出てくる業者もいます。これには信用おける場合とそうでない場合もあるので要注意です。

具体的には、家賃保証という契約で、あたかも30年間固定賃料を保証したかのようなセールスをしてきたら要注意です。家賃保証とか建物賃貸管理(サブリース)という言葉が出てきたら、契約書のひな型を見せてもらうようにしましょう。

修繕費用負担が別途費用になっていたり、リフォーム業者の選定などが業者任せになっていたりすると、思わぬ出費になるため注意が必要です。また、契約条項に書いていないルールがあることもあります。

細心の注意をしないと、リフォーム業者を選べない、解約したくても違約金がかかる、家賃保証は固定金額の保証ではなく、いつでも引下げがされてしまう、といった落とし穴があります。

また、こうした建物管理契約は、貸主が建物所有者で、建築業者やその関連会社が建物管理をする名目で借主(サブリース業者)となり、それを入居者にまた貸しするというスキームになります。

建物の賃貸借契約の基本ルールとなる「借地借家法」では、通常は立場の弱い借主を保護する思想になっているのですが、上記のまた貸しスキームではサブリース業者が借主という立場になることによって借地借家法の保護を受けてしまい、サブリース業者が貸主に対して一方的に賃料を引き下げること(賃料減額要求)ができてしまいます。

例えば、賃貸アパートに空室が出来たようなとき、サブリース業者は損をしないように貸主に支払う賃料を一方的に引き下げることができてしまいます。つまり、実際には家賃保証など全くなされないことが多く、このようなトラブルは全国で頻発しているので注意を要します。

相続予定の不動産の活用方法について

相続予定不動産

以上の通り一般的な不動産の活用方法について説明しましたが、以下では、一般的な不動産の活用と、相続予定の不動産の活用との違いについて説明いたします。

相続予定の不動産

相続の対象となる不動産は、基本的に個人所有の自宅、アパート、駐車場などがありますが、会社が使用している社屋や工場、倉庫などであっても、社長個人の名義で保有していることがあり、これらも相続の対象になります。

相続予定の不動産の活用においては、一般的な不動産の活用に加えて、相続税における節税という視点が必要になります。

更地などの活用方法としては、借金して賃貸アパート建築という王道的な節税方法があります。メリットとして、借金や賃貸用途であることによる相続税評価減となることや、賃料による安定収入源が得られることです。

ただ、事業計画や運営を誤ると、キャッシュフローが回らず、売却して借入返済するという事態にもなりかねないというリスクもあります。

借金することで債務が増え、相続資産を圧縮する効果がありますし、銀行もノルマがあるので、積極的に融資を行う姿勢はありますが、慎重に考える必要があります。

借入金額は多い方が、節税効果があるのですが、過度な借入や、返済期間の短い場合は、毎月の返済資金で資金繰りが厳しくなってしまうというリスクが高まります。

返済が苦しいので、不動産を売って返すとなってしまうのであれば、結果として現金を返済に充てることとなって資産が目減りし本末転倒です。

相続で引継いだ不動産

次に、相続予定であった不動産を実際に相続した後についてもひと言コメントしておきます。

相続で引継いだ不動産については、次の世代への相続対策が必要ないのであれば、上述した一般的な不動産の活用法に従って、最有効使用を判定して事業を行えばいいでしょう。

まとめ

不動産は個別性が強いので、結局のところ、売却か活用かは個々に細かく判断していくしかありません。

特に相続予定の不動産については、まずは売るべきか活用するべきかの選択について、売却した際の経済的メリット、相続対策の効果と、活用した場合の経済的メリットと相続対策の効果を総合的に比較して決定することとなります。

相続対策として行う不動産の活用について、不動産鑑定士や詳しい専門家の精査があれば、その妥当性も判断でき、安心してアパート建築や借金を行うことも可能になるでしょう。