面倒なエンディングノートは書かなくていい?

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面倒なエンディングノートは書かなくていい?

相続手続はとても複雑、煩雑です。準備なしに相続を迎えてしまうと、予期せぬトラブルが発生し、残された家族にも迷惑をかけることが多いでしょう。

大切な家族が困らないためにも事前の準備が必要。相続準備、つまり「終活」が必要ということです。

終活の第⼀歩としてよく耳にするのが「エンディングノート」の作成です。エンディングノートには、自分名義の財産目録や、遺産分割に関する希望、葬儀やお墓の希望などが含まれます。また、世話になった⼈へのお礼や、家族に向けたメッセージを書くこともできます。

確かにこのようなエンディングノートを作成できれば、相続準備として有益ではありますが、記載すべきことがあまりにも多くて、なかなか作成する気になれない、というのが現実ではないでしょうか?

この記事では、エンディングノートを作成すれば相続準備に有益ではあるが、なくてはならないものでもないので、面倒なら書かなくてもいいということと、ご遺族に残す情報として最低限これだけはあったほうがいいという事項について説明します。

エンディングノートを書くメリット

エンディングノートとは、⾃分⾃⾝が亡くなった後に、遺された家族や友⼈、知人が必要とする情報を書きとめた文書のことです。具体的には、自分自身のプロフィール、世話になった⼈へのお礼や家族へのメッセージ、財産目録、葬儀やお墓の希望、延命措置や臓器提供の希望などが含まれます。

このようにエンディングノートには、遺された家族が相続⼿続をはじめ、他界する前後の手続に必要な情報がまとめられていますので、相続⼿続だけでなく、医療の問題、葬儀やお墓のことなどでも、関係者間での意見の違いなどから生じる無用な揉め事も避けることができます。

エンディングノートでは実現できないこと

このように相続手続をはじめ他界する前後の手続において役に立つエンディングノートではありますが、エンディングノートでは実現できないこともあります。その代表的なものは、自分が希望したとおりに相続人や相続人以外の人へ遺産を分配することです。

自分が希望したとおりに相続人や相続人以外の人へ遺産を分配するためには、民法で定められた方式に従って作成する「遺言書」が必要となります。たとえ、エンディングノートに遺産の分配方法を詳細に記載したとしても、法律上の効果はなく、自分の希望は実現されないのです。

ただし、エンディングノートに遺産の分配方法を詳細に記載することは無駄ではありません。行政書士などの専門家に相談して遺言書を作成する際には、エンディングノートに記載した内容を参考資料として提示することで、自分の希望にかなったクオリティの高い遺言書が少ない手間で作成できることでしょう。

面倒なエンディングノートは書かなくていい

以上のとおり、エンディングノートを作成すれば相続準備等として有益ではあるが、最もトラブルが生じやすい遺産の分配方法については法律上の効果もなく、そのため関係者間での揉め事を回避するための特効薬とはなり得ないということがわかりました。

つまり、エンディングノートは「あったほうがいい」というものであって、必須とまでは言えないものです。ですので、エンディングノートの作成が面倒なら、無理して書かなくても大丈夫です。普段から、家族や友人、知人などとコミュニケーションをとり、自分のこと、自分が考えることなどを伝え、可能であれば来るべきときに備えての自分の希望することなどを話す機会がもてれば、それでもいいのではないでしょうか。

最低限あったほうがいいこと

エンディングノートは面倒なら書かなくてもいいと考えれば少しは気が楽になったのではないでしょうか?とはいえ、全く何もしないのも逆に不安かもしれません。

ということで、ご遺族に残す情報として最低限これだけはあったほうがいいという事項について、私の経験もふまえてご紹介します。

延命治療と臓器提供

延命治療や臓器提供の要否は本人の意思を重んじるのが原則ですが、往々にして本人の意思表示ができないタイミングでその判断が必要となり、家族の間での意見が対立するなどのトラブルが生じやすいと言えます。

自分の希望であるとともに、大切なご家族のためでもありますので、延命治療や臓器提供の要否については、エンディングノートでも何でもいいので、あらかじめ文書として情報を残しておいたほうがいいでしょう。

葬儀とお墓のこと

葬儀やお墓についても家族間で意見が対立しやすい点ですので、例えば、葬儀は家族や親しい人だけで行う家族葬とし、お墓は菩提寺にある先祖代々の墓にして欲しいなど、希望があればはっきりと書き残しておくべきでしょう。とくに希望が無い場合には、「葬儀とお墓については長男に任せる」など、決定権者を明確にする方法も有効です。

あと、私の父の葬儀の際に困った経験からですが、誰に葬儀へ参列してもらうかを明確にすることが有益です。というのも、親戚くらいなら誰に参列してもらうかわかるのですが、友人、知人となると、故人の人間関係をよく知っていないと参列者を特定できません。自分のためでもあり、家族のためでもありますので、葬儀へ参列してほしい人のリストは残しておいたほうがいいでしょう。

オンラインの財産情報

最後に挙げるのがオンラインの財産情報、インターネットバンキングなどのオンライン情報のことです。

私の父の場合は、預金口座は全て紙の通帳、保険証券やゴルフ会員権なども全て紙の書類で、全て机の引き出しに入っていたので全く苦労しませんでしたが、今や銀行口座の多くが通帳のないインターネットバンキングであり、株式、FX、暗号通貨などの投資資産もオンラインになっています。

これらの情報をリスト化して文書にしておかないと相続手続の際に財産の特定でご遺族が苦労してしまいますので、メモ書きでもいいですから整理して残しておきましょう。

まとめ:面倒なエンディングノートは書かなくていい?

以上のとおり、エンディングノートを作成すれば相続準備に有益であることは間違いありませんし、終活に取り組むのであれば、その第一歩としてエンディングノートの作成がおすすめです。

しかし、エンディングノートは、なくてはならない必須のものでもないので、面倒なら書かなくてもいいという選択肢もあり得ます。

ただ、エンディングノートの作成はしないにしても、ご遺族のために最低限これだけはあったほうがいいという事項もあります。延命治療と臓器提供、葬儀とお墓のこと、オンラインの財産情報などです。

終活は、まずは無理なく出来る範囲からゆっくりと進めればいいでしょう。