相続で必要な戸籍謄本は何通か?必要部数は?

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相続で必要な戸籍謄本は何通か?必要部数は?

相続手続きにおいて、戸籍謄本は、法定相続人の特定という相続での基本情報にかかわる書類です。まず本記事では、相続で必要な戸籍謄本とは具体的に誰のどのような戸籍謄本なのかを詳細に説明します。そのうえで、相続に必要な戸籍謄本は何通なのかを具体例を挙げて解説します。

また、戸籍謄本は相続のどういった手続きに必要になるのかを解説し、戸籍謄本は原本が必要なのか、コピーの提出も可能なのか、結局、戸籍謄本の必要部数は何部になるのかについても詳しく説明します。

本記事で説明するポイント
・相続では誰のどういった戸籍謄本が必要なのかの理解
・相続手続きに必要な戸籍謄本は何通くらいになるかを把握
・戸籍謄本の提出が必要な相続手続きの理解
・コピーや法定相続情報一覧図の利用による戸籍謄本の必要部数節約法

相続で必要な戸籍謄本は何通か?

必要通数

まず、故人の出生から死亡までの戸籍謄本や、相続人全員の戸籍謄本など、相続手続きにおいて必要不可欠となる戸籍謄本について説明し、それら戸籍謄本は何通になるのかを解説します。

故人の出生から死亡までの戸籍謄本

故人の出生から死亡までの戸籍謄本は、相続手続きにおいて最優先で必要となる書類です。故人の出生から死亡までの戸籍には、故人の生涯にわたる家族・親族関係が漏れなく記録されており、この記録を確認することで、故人の法定相続人が誰にあたるのかを特定することができるからです。

例えば、故人が結婚していて子供がいた場合、その配偶者や子供の情報が戸籍謄本には記録されているので、法定相続人はこれら配偶者と子供であることが特定できます。あるいは、故人の結婚前の戸籍に認知した子供の情報が記載されていれば、この認知した子供も法定相続人に加わることが確認できます。

ただし、出生から死亡までの戸籍謄本は複数通の連続した戸籍謄本からなる場合が多く、しかもその過程で本籍地が変更されるなどにより、複数の役所から取得する必要がある場合も少なくありません。出生から死亡までの戸籍謄本は、取得までに手間と時間がかかるとともに、出生から死亡までの戸籍謄本が取得できなければ、これに続く各種の相続手続きを始めることができないので、できるだけ早いタイミングで取得手続きを始めることが推奨されます。

相続人全員の戸籍謄本

故人の出生から死亡までの戸籍謄本の取得が完了し、法定相続人の特定ができたら、次は相続人全員の戸籍謄本が必要となります。この書類は、特定された法定相続人が故人の死亡時点で生存していることを証明するためのもので、故人の死亡時点以降のタイミングで発行された「現在の戸籍謄本」が求められます。

例えば、法定相続人が配偶者と未婚の子供一人であった場合、故人の出生から死亡までの戸籍謄本のうち死亡時の戸籍謄本に配偶者と未婚の子供が通常は記載されているはずなので、相続人全員の戸籍謄本を別途取得する必要はありません。一方、法定相続人が配偶者と既婚の子供一人であった場合、故人の出生から死亡までの戸籍謄本のうち死亡時の戸籍謄本には配偶者のみ記載され、既婚の子供は通常は別戸籍が作成されて記載されていません。つまり、相続人全員の戸籍謄本は、配偶者のものは別途取得する必要はありませんが、既婚の子供については、別途現在の戸籍謄本を取得する必要があります。

また、法定相続人として特定された者(子供や兄弟姉妹など)者が、故人の死亡前に既に死亡していた場合、死亡している者は法定相続人にはならないので、その子や孫などの代襲相続人を探す必要があります。代襲相続人が存在すれば、その者が法定相続人となるのです。代襲相続人の確認においても、被代襲相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を取得することになり、これによって代襲相続人が誰なのかを特定することができます。

相続で必要な戸籍謄本の通数

以上のとおり相続で必要となる戸籍謄本は、基本的には、故人の出生から死亡までの戸籍謄本と、相続人全員の戸籍謄本になります。これら戸籍謄本が何通になるのかは、故人の家族・親族関係や、どの範囲までが法定相続人として特定されるのかによって異なります。

また、戸籍謄本は「改製」があると新しく作り直されるので、家族・親族関係に変動がなくても改製のタイミングで戸籍謄本の通数が1通増えることになります。戸籍謄本の改製とは、法改正等により戸籍の形式や内容が変更され、戸籍謄本を新しく作り直す手続きのことです。例えば、昭和23年(1948年)や平成6年(1994年)などに戸籍謄本の改製が行われました。

例えば、1960年生まれの故人が1995年に結婚し、その後、子供が二人でき、2024年に死亡した場合で、配偶者と子供二人はみな健在、子供のうち一人は既婚、もうひとりは未婚であったときに必要となる戸籍謄本の通数を考えてみます。

故人の出生から死亡までの戸籍謄本は、まず出生時1960年から1995年の結婚により除籍されるまでのものが必要です。この間、1994年に戸籍謄本の改製がなされているので、出生から結婚による除籍までの戸籍謄本は少なくとも2通になります。

1995年の結婚により新たな戸籍謄本が作成され、その後は死亡まで戸籍謄本は、本籍地の移動などが無い限り1通のままとなります。従って、本事例での故人の出生から死亡までの戸籍謄本は、結婚前の2通と結婚後の1通とで、あわせて3通となります。

次に、この事例での相続人全員の戸籍謄本です。法定相続人は、配偶者と子供二人です。うち、配偶者と未婚の子供は故人の死亡時における戸籍謄本に記載されているので、別途取得する必要はありません。一方、既婚の子供については故人の戸籍謄本からは結婚により除籍されているため、別途、現在の戸籍謄本、つまり結婚により新たに作成された戸籍謄本など現在の戸籍謄本を1通取得する必要があります。

このように本事例は、配偶者と子供二人が法定相続人となり、子供のうち一人は既婚、もうひとりは未婚という比較的単純なケースですが、相続で必要な戸籍謄本の通数は、故人の出生から死亡までの戸籍謄本が3通、これとは別に相続人全員の戸籍謄本として1通の、あわせて4通となりました。代襲相続があったり、法定相続人が兄弟姉妹など広範囲に及んだりするような場合には、相続で必要な戸籍謄本の通数が何倍にもなる可能性があり、しかも複数の役所から戸籍謄本を取得する必要が生じる場合がほとんどなので、相続で必要な戸籍謄本を全てそろえるまでには、かなりの手間と時間がかかります。自力では難しい場合、相続業務を専門とする行政書士などに依頼する方法もおすすめです。

相続で必要な戸籍謄本の必要部数

必要部数の戸籍

相続で必要な戸籍謄本の通数は、通常少なくとも4通以上になることを説明しましたが、次にはこれら戸籍謄本(セット)の必要部数について、コピー提出の可否や法定相続情報一覧図の利用などに触れながら解説します。

戸籍謄本の提出が必要となる相続手続き

ほぼ全ての相続手続きにおいて、戸籍謄本(セット)の提出が必要となります。なぜなら法定相続人が特定されなければ、どの遺産を誰が相続するのか証明できないからです。

例えば、故人の所有していた銀行預金などの払戻し手続きにも戸籍謄本の提出が必要となりますし、故人の所有していた株式などの名義変更手続きにも戸籍謄本の提出が必要となります。また、故人が所有していた土地や建物などの不動産登記や、自動車などの名義変更にも戸籍謄本の提出が必要です。

そのほかに、相続税申告においても戸籍謄本の提出が必要となります。法定相続人を特定することにより、納税義務者と納税額の特定を行うからです。なお、複数の法定相続人が共同で相続税の申告書を作成して提出する共同申告という手続きもあります。共同申告をする場合は、戸籍謄本の必要部数は申告あたり一部で済みます。

このように、戸籍謄本の提出が必要となる相続手続きは、故人の遺産の状況によって様々ですが、原則的には一つの手続きで戸籍謄本(セット)が一部必要となります。遺産の種類が多く、必要な相続手続きが多くなると、必要な戸籍謄本の部数は多くなります。

コピーで提出可能なケース

相続手続きにおいては、戸籍謄本(セット)のコピーを提出できる場合があります。コピーで提出可能なら取得すべき戸籍謄本の部数を減らすことができるので便利です。戸籍謄本をコピーで提出可能なケースは、特定の手続きや機関によって異なるため、事前に確認が必要です。

例えば、相続税の申告では、戸籍謄本(セット)のコピーでの提出が認められています。相続による自動車の移転登録では、申請時に戸籍謄本(セット)の原本を提示すれば、提出はコピーだけでも可能です。その他、一部の金融機関でも戸籍謄本のコピー提出を認めている場合があります。

また、コピーでの提出とは若干意味合いが異なりますが、不動産の相続登記では、申請時に戸籍謄本(セット)の原本とコピーを一緒に提出し、登記完了後に原本を返却してもらえる「原本還付」という制度があります。戸籍謄本の原本を一定期間預ける必要がありますが、返却された後には別の相続手続きで利用できるので戸籍謄本の必要部数を節約できて便利です。同様な原本還付は、多くの金融機関でも実施されている場合がありますので、戸籍謄本の取得をする際に、あらかじめ原本還付が可能かどうか問い合わせてみるといいでしょう。

法定相続情報一覧図の利用

法定相続情報一覧図とは、法務局が行っている法定相続情報証明制度による証明書です。相続人またはその代理人による管轄の法務局への申請で、相続関係を一覧に表した図「法定相続情報一覧図」が発行されるものです。手数料は無料です。法定相続情報一覧図は、「家系図」のような見た目をしており、家族・親族のなかの誰が法定相続人にあたるのか一目瞭然となるものです。

法定相続情報一覧図の申請時には、先述した相続で必要な戸籍謄本(セット)の原本と、法定相続情報一覧図のドラフトとなる図の提出が必要です。法務局の登記官は、提出された戸籍謄本と一覧図のドラフトを確認し、その内容が民法に定められた相続関係と合致していることを確認した上で、一覧図に認証文を付した写しを交付します。なお、法定相続情報一覧図が発行された後、提出した戸籍謄本(セット)の原本は還付されますので、戸籍謄本の必要部数を節約できます。

法定相続情報一覧図は、不動産の相続登記はもちろん、その他の相続手続きにおいても戸籍謄本に代えて提出することが広く認められています。法定相続情報一覧図を利用すれば、相続で必要な戸籍謄本(セット)は多くの場合、一部だけ取得しておけばよいと言えます。

まとめ:相続で必要な戸籍謄本は何通か?必要部数は?

本記事での内容をまとめると以下のとおりです。

・相続手続きでは故人の出生から死亡までの戸籍謄本と相続人全員の戸籍謄本とが必要である。

・相続手続きで必要な戸籍謄本は法定相続人の状況によって異なるが、単純なケースでも4通くらいは必要になる。

・各相続手続きでは原則として戸籍謄本は一部ずつ必要となる。

・相続手続きによっては、コピー提出や原本還付が可能なものもあるので、戸籍謄本の必要部数を節約できる。

・相続手続きに法定相続情報一覧図を利用すると、戸籍謄本は一部だけで済むことが多い。